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3/23(月)ニュース AIの目”で激変する「スポーツ中継」最新事情。無人カメラが中継ビジネスを変える

この記事の注目点はココ!

・「視聴者が楽しめるエンターテインメント性」を高めた中継技術が登場
・課題はコスト

撮影:大塚淳史

スポーツの試合中継の配信サービス、映像表現がこの数年で劇的に変わっている。
試合そのものだけでなく、選手やチームの情報をリアルタイムで画面に流す中継映像サービスも珍しいものではなくなった。CGを駆使した解析映像など、より「視聴者が楽しめるエンターテインメント性」を高めた中継技術が登場している。
2月5日から7日に東京で開かれた「スポーツビジネス産業展」から、スポーツ映像の可能性を示唆する展示をまとめた。

8台のカメラ活用してエンタメ性ある映像に富士通はモーショントラッキングをBリーグと一緒になって実証実験している。
撮影:大塚淳史

今回初出展した富士通は、バスケ男子プロリーグ「Bリーグ」と一緒に進めている、モーショントラッキングの映像を紹介していた。
8台のカメラでコート上の選手やボールの動きを撮影し、映像を解析して、選手の位置情報を取得する。これにより、例えば、自分の見たい選手だけを追いかける映像を作ることも可能だ。
シュートの距離、成功率、選手の走行距離、ジャンプした時の高さなども、同時に解析できる。
富士通の阪井洋之執行役員常務(東京オリンピック・パラリンピック推進本部担当、スポーツ・文化イベントビジネス推進本部担当)は、
「チームの戦術強化にも使えるし、またテレビやネット放送での映像コンテンツでも利用できるように進めている。データを映像に重ねてエンタメ性を上げる」
と話した。
現在は、川崎ブレイブサンダースのホームアリーナである「とどろきアリーナ」に常設カメラを設置して、いくつかの試合で実証実験を始めている。
課題は「コスト」。上記のようなモーショントラッキングした映像を作るために、複数台のカメラを設置し、さらに「スタッフによる映像の選別」という人の手も必要とするからだ。
「一試合だけでは採算が難しいが、アリーナに常設することで、プロだけでなくアマチュアの試合でも(カメラが)使えるようになる。アマチュアの試合では、プロの試合ほどの解析は必要がないケースもあり、そのまま映像を流しても楽しんでもらえるはず」(阪井執行役員常務)
パナソニックが取り組む「革新的なスポーツ中継」
NTTドコモのブースでは、2019年のラグビーワールドカップで5Gプレサービスとして行った他視点映像を紹介していた。
撮影:大塚淳史

筆者の記憶には、ここ数年の日本のスポーツ中継において、視聴者に大きな印象を与えた国際大会の中継が2つある。
1つは、2018年のサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、NHKが提供した専用の映像配信アプリだ。アプリ上で試合を、全体、フィールド真上、ゴール裏、選手に接近した映像など、さまざまな視点を選んで見ることができた。
2つめは、2019年に日本で開催したバレーボールのW杯。パナソニックの映像解析技術「3Dトラッキング」が話題になった。例えば、選手がスパイクで得点を決めた直後の再現映像で、選手の打点の高さ、打った球の速度や軌道起動を即座に表示し、選手たちの「プレーのすごさ」を可視化し、視聴者を楽しませた。
パナソニックはこのシステムをスポーツビジネス産業展でも改めて展示していた。
パナソニックのブースでは、2019年バレーボールW杯のテレビ中継で話題になった、映像解析技術「3Dトラッキング」を紹介していた。
撮影:大塚淳史

同じ2019年のラグビーW杯日本大会では、CGと実映像を組み合わせた「プレーの再現映像」が話題になった。どの視点からでも見られ、選手たちの緻密な動きがわかるようになり、視聴者がよりラグビーを知るきっかけになった。

ラグビーW杯では他にも、NTTドコモが、試合会場のスタジアム8カ所を5Gエリア化し、5G端末を活用したプレサービスを提供していた。端末画面上で、異なる視点の映像を同時に楽しむことができる。今回の展示ブースでも紹介していた。
スポーツビジネス産業展で映像サービスの展示が多かったNTTドコモ。
撮影:大塚淳史

「5Gによって、大容量の映像を送れ、さらに低遅延というメリットがある。ラグビーW杯の時は、目の前で行われている試合と端末映像の時差がだいたい0.8秒くらいでした。今後はさらに一致できるよう目指していきたい」(ドコモ担当者)
1つの試合の多視点だけでなく、他会場を同時に一つの端末で映すようなコンテンツも可能になるのではないかとも話していた。一方で、スポーツ映像市場の大きな可能性が、人気プロスポーツよりも、マイナースポーツやアマチュアスポーツにある、と指摘していたのが、NTT西日本のビジネスデザイン部オープンイノベーション推進室室長の中村正敏氏。
「100万人が見る1、2試合ではなく、100人、200人が見る試合を、1万試合、配信したい」(中村氏)
サッカー・Jリーグやプロ野球、バスケットボール・Bリーグは既に放送が確立されている。一方で、放送されない、中継されない幾多のスポーツの試合が今も無数にある。
世界のスポーツ市場は今も拡大している。(中村氏の講演時のスライドより)
撮影:大塚淳史

「我々はアマチュア、マイナースポーツといった“小さい規模のスポーツ”を映像化して、楽しめる世の中にしていきたい。日本にはアマチュアスポーツのチームが、代表的なものだけでも10万チームくらいある」(中村氏)
中村氏は、世界のスポーツ市場は大きくなっていて、それ以上に日本の市場も大きくなっていると語る。ただ、ここでも課題は「コスト」だ。
「(人気スポーツの中継のように)広告が大きく入るモデルではないので、いろんな人から少なくお金をもらうマネタイズ方式(にならざるをえない)。価値を提供して、その価値を(ファンに)どう認めてもらうか」(中村氏)
実はアマチュアスポーツチームはかなり多い。
撮影:大塚淳史

イスラエル製のAIカメラで「無人中継」NTT西日本はイスラエル製のAIカメラ「ピクセロット」を活用して、マイナー、アマチュアスポーツの映像配信事業に取り組む(NTTドコモのブースで展示)。
撮影:大塚淳史

それを実現する一環として、NTT西日本は現在、電通、朝日放送ホールディングス、朝日新聞社、日宣らと共同で、2019年からイスラエル企業「Pixellot Ltd.(ピクセロット)」が開発したAIカメラを活用した映像配信事業に取り組んでいる。
展示会にも、実物が置いてあった。AIカメラは、試合が俯瞰できる場所に設置して使う。
このカメラには全体で4カ所、レンズが固定してあり、それぞれ別視点を撮影する。その収録された映像を瞬時につなぎ合わせ、一つの映像にする。その際、ソフトウェア処理でスムーズにズームインし、また選手やボールを追いかける映像に作り替える。
「このAIカメラのすごさは、瞬時に4つの映像から必要な映像を作り出すソフト、アルゴリズム」(中村氏)
カメラを会場に据え置いて、あとはスマホやタブレットで操作できる。撮影のためのスタッフは不要。既にアメリカやヨーロッパで使われているという。
さっそく、2020年1月1日から、日本ハンドボール協会と一緒になって、熊本県の山鹿市総合体育館にこのカメラを設置して、体育館で開催されているハンドボールの試合を中継する実証実験を始めている。特設サイト「ヤマガチャンネル」でその映像が見られるが、カメラマンを現地に配置せずとも十分試合を楽しめるものになっている。
ヤマガチャンネルでは、ピクセロットのAI中継カメラの実映像を見られる。スムーズなカメラワークは、無人カメラで生成された映像とは思えないほど。
出典:ヤマガチャンネル

今後、各地の体育館やアリーナ、スタジアムにカメラを常設することで、簡単に映像中継ができる仕組みの広がりを狙う。
このスポーツ映像ソリューションを使うことで、例えば、小学校、中学校、高校の試合でも、中継が可能になり、子を持つ親にとっても需要があるかもしれない。そこには新たなビジネスの芽も当然出てくるはずだ。
多様化するスポーツ映像配信は、スポーツの楽しみ方と、スポーツビジネスそのものも広げていく ── スポーツビジネス産業展の展示には、そんな手ごたえを感じた。

引用:AIの目”で激変する「スポーツ中継」最新事情。無人カメラが中継ビジネスを変える
特にアマチュアスポーツにおいては試合映像をチェックできる機会は少なく、ポテンシャルを秘めた市場となっている。さらにAIカメラの導入・運用コストによっては、学校行事といったスポーツ以外の場面でも幅広く活用されていく事になりそうだ。

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