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5/8(金)ニュース なぜキャリアの5Gとは別に「ローカル5G」が必要なのか? メリットと課題を整理する

この記事の注目点はココ!

・ローカル5Gなら、必要な場所にピンポイントで5Gのネットワークを構築できる。
・外部環境に左右されないローカル5G

5Gはキャリアが展開するものと思われがちだが、実はエリア限定ながら、キャリア以外でも自由に5Gのネットワークを構築できる「ローカル5G」という仕組みも存在する。特に法人での5G活用においては、ローカル5Gに高い関心が寄せられているようで、既に多くの企業が参入を打ち出しているが、その展開には課題もいくつかあるようだ。

Wi-Fiより広範囲をカバーできるローカル5G

2020年3月に3キャリアが相次いで5Gの商用サービスを開始し、いよいよ国内でも誰でも5Gによる通信を活用できるようになった。当面エリアは非常に狭いことから、多くの人が5Gを活用できるようになるにはしばらく時間を要するが、今後エリア整備が進むにつれ、5Gの活用が広がっていくことだろう。

だが5Gのビジネス活用という視点で見た場合、キャリアが展開する5G以外にもう1つ、大きな盛り上がりを見せている5Gが存在する。それがエリア限定で展開する5Gのネットワーク「ローカル5G」である。

ノキアソリューションズ&ネットワークスが2019年12月11日にIIJ(インターネットイニシアティブ)や丸紅など5社と提携し、日本でのローカル5GやプライベートLTEの拡大を進めるなど、ローカル5Gを巡る各社の動きは活発化してきている

従来ビジネスで活用される無線ネットワークといえば、Wi-Fiが多くを占めている。しかしWi-Fiは狭い場所をカバーするのには向いているが、大規模な工場など面積の広い建物や、屋外をカバーするのにはあまり向いていない。

だが5Gはもともと携帯電話向けの通信規格であるため、ハンドオーバーの仕組みが整っているなど広範囲をカバーするのに適している。それに加えて高速大容量、超低遅延、多数同時接続といった3つの特徴を備え、幅広いビジネス用途に活用できるネットワークであることから、産業用途にWi-Fiの代わりにローカル5Gを活用しようという動きが進みつつあるわけだ。

実は欧米などでは5Gに先駆けて、4Gの技術を用いてエリア限定の無線ネットワークを構築する「プライベートLTE」の活用が進んでおり、既に工場や港湾、鉱山などでのデジタライゼーションに活用されている。日本でもこれまで企業の内線に用いられてきた「自営PHS」の後継規格として、ローカルLTEの仕組みを用いた「sXGP」を活用する動きが進みつつあることから徐々に知られるようになってきているが、ローカル5GはそうしたプライベートLTEの延長線上にあるものといっていいだろう。

ローカル5G
ローカル5Gの前身というべきプライベートLTEは、国内でも自営PHSの代替となる「sXGP」規格として導入が進められている。写真は「CEATEC 2019」に展示されていた富士通のsXGPシステム

キャリアに左右されないのが最大の魅力

とはいえ、5Gは既にキャリアが展開しており、今はエリアが狭いがいずれは全国津々浦々をカバーする予定だ。それだけに、なぜ携帯電話の5Gとは別にローカル5Gが必要なのか? と考える人もいるかもしれない。

その最大の理由は、独立したネットワークであることだ。キャリアキャリアの5Gネットワークは非常に多くの人が利用するため、例えば災害が発生したり、大きなイベントが開催されたりしたときはネットワークが混雑して輻輳(ふくそう)が発生し、接続しづらくなることがある。だが、例えば建設機械の遠隔操作に5Gを活用しているようなケースでは、ネットワークが外部環境に左右されてしまうと、その都度機器の制御がうまくできなくなってしまい大きな問題が発生してしまうことから、外部から切り離され独立したネットワークが必要となってくるわけだ。

また企業によっては、自社の情報を外部に漏らしたくないなど強いセキュリティを求めることもあり、例えば工場内のネットワークを外部のネットワークとは完全に切り離したいというニーズも少なからずある。そうしたニーズに応える上でも、外部環境に左右されないローカル5Gの存在が重要なのである。

そしてもう1つ、ローカル5Gの大きなメリットとなるのが、キャリアの動向に左右されることなく5Gのネットワークを活用できることだ。各社の発表によると、キャリアの5Gネットワークが全国に整備されるには1年半から2年以上は待つ必要があるし、整備が進んでもなお、山間部などではカバーがなされない場所も出てくることが考えられる。

だがローカル5Gなら、必要な場所にピンポイントで5Gのネットワークを構築できる。それゆえキャリアのエリア整備の動向を気にする必要なく、必要なときに必要な場所で5Gのネットワークを構築し、活用できるわけだ。

ローカル5G
ローカル5Gは外部のネットワークの影響を受けることなく、またキャリアの方針に左右されず必要な場所に構築できる点が大きなメリットとなる。写真はCEATEC 2019のNECブースで展示されていたもの

比較的先行している日本のローカル5G

日本では「キャリアの5G商用サービス展開が遅れている」といわれているが、その分ローカル5Gの展開は進んでいるとされている。実際、総務省は2019年12月24日にローカル5Gの電波免許申請の受付を開始している。

総務省はローカル5Gに関して、キャリア向けに割り当てたものとは別に、4.5GHz帯を200MHz幅、28GHz帯を900MHz幅確保している。だがこれらはいずれも衛星通信など既存のシステムと調整が必要な帯域であるため、現在割り当てられているのは、既に調整が済んでいる28GHz帯の一部(100MHz幅)のみとなっている。

ローカル5G
日本ではローカル5Gには4.5GHz帯と28GHz帯を割り当てているが、他のシステムとの調整が必要なことから、現在免許申請を受け付けているのは、調整が済んだ28GHz帯の一部に限られている

だがそれでも、ローカル5Gに商機を見いだした企業は多いようで、免許申請の受付開始当初から多くの企業や自治体が申請を実施。例えば総務省の関東総合通信局では、NTT東日本やジュピターテレコムなど固定通信関連の企業の他、NECや富士通など通信関連の技術を持つ企業、さらには東京都なども申請を実施している。

ローカル5G
富士通のプレスリリースより。同社は国内で初めて商用のローカル5G無線局の免許を取得しており、「富士通新川崎テクノロジースクエア」の敷地内でローカル5Gのシステム運用を開始している

そして2020年3月27日には、富士通が国内で初めてローカル5Gの免許を取得し、同社の富士通新川崎テクノロジースクエアでローカル5Gシステムの運用を開始したことを発表。まずは5Gとカメラ、AIを活用して不審な行動を検知するセキュリティシステムを実現するとしており、今後は同社のネットワーク機器の製造拠点である栃木県小山市でも免許を取得し、スマートファクトリーの実現に向けた検証を進める計画だという。

ちなみに、日本ではキャリアがローカル5Gの免許申請をすることはできないが、MVNOが申請することは可能となっている。例えば「mineo」を展開するオプテージは、2020年3月10日にローカル5Gの実験試験局免許の交付を受けている。「OCN モバイル ONE」を展開するNTTコミュニケーションズも、2020年3月26日にブリヂストンとローカル5Gを活用した製造現場のデジタルトランスフォーメーションに向けた検証を実施すると発表した。このように、MVNOがローカル5Gに関する取り組みを積極的に打ち出すケースも増えている。

現状の課題はNSAとノウハウの不足

自由度が高く展開する事業者の幅も広いことから、スマートファクトリーなど産業向けを中心として、ローカル5Gに高い期待を抱いている人や企業、自治体は多いようだが、ローカル5Gにも課題はいくつかある。中でも大きな課題といえるのは、現在割り当てられている28GHz帯はノンスタンドアロン(NSA)での運用が求められることではないだろうか。

5Gの法人利用では、高速大容量通信よりも低遅延などに期待が寄せられている部分が大きい。にもかかわらず、ローカル5Gはゼロから構築するネットワークでありながら、最初からスタンドアロン(NSA)運用ができないのは残念な部分だといえる。

NSA運用が求められるということは、5Gだけでなくそのベースとなる4Gのネットワークも用意する必要があることも意味しており、そのためには4Gの周波数帯も必要になってくることから、事業者にかかる手間とコストはそれだけ大きくなってしまうのも課題だ。それゆえ京セラのように、あえてSAでの運用が可能な帯域の免許割り当てまで参入を待つ企業もいる。

ちなみに総務省は、ローカル5G事業者が4Gのネットワークを運用するに当たり、地域BWA向けに割り当てられている2.5GHz帯の帯域を活用できるようにする方針を打ち出している。地域BWAは、ケーブルテレビ会社などが特定の地域限定で提供している、WiMAXやAXGP方式によるBWA(Broadband Wireless Access)サービス。この帯域が使われていない地域が多く存在することから、そうしたエリアでローカル5G向けに活用してもらおうとしているわけだ。

ローカル5G
現在割り当てがなされている28GHz帯はNSAでの運用が求められ、5Gだけでなく4Gの設備が必要になるなど手間とコストがかかる。そこで京セラは、SAでの運用が可能な4.5GHz帯の割り当てに照準を合わせ、基地局などの開発を進めている

もう1つ、ある意味でローカル5G最大の課題といえるのは、ローカル5Gに参入する企業が必ずしも携帯電話のネットワークに詳しいわけではなく、5Gのノウハウを持ち合わせているとは限らないことだ。それゆえ実際のところは、ローカル5Gの構築や運用に関して、キャリアの力を借りるケースが少なからず出てくるものとみられている。

キャリアはローカル5Gに直接参入できないが、参入企業への技術協力などは可能であることから、キャリアがローカル5Gの下支えをすることは自然な流れでもある。だが市場競争上の観点から見れば、ローカル5Gでもキャリアの影響が大きくなってしまう可能性もあるだろう。

またキャリア側も「おでかけ5G」や「キャリー5G」など、一時的に5Gネットワークを利用できる設備を提供するなどして、ローカル5Gが獲得するニーズを先取りしようという動きも進めており、こうした点もローカル5G事業者にとっては脅威になるだろう。そうしたキャリアの動きに、ローカル5Gの免許割り当てを受けた各社がどのような方針を取ることになるのか、今後の動向が注目されるところだ。

ローカル5G
ソフトバンク系のWireless City Planningが、2020年1月に大成建設と実施した、トンネル工事現場における作業員の安全管理を目的とした「i-Construction」の実証実験説明会より。実験には可搬型の5G基地局「おでかけ5G」が用いられているという

引用:なぜキャリアの5Gとは別に「ローカル5G」が必要なのか? メリットと課題を整理する

キャリアが運用する5G以外に、ローカル5Gが盛り上がりを見せているようだ。ローカル5Gが普及すると、今までのWi-Fiのデメリットである広い範囲での通信の弱さが解消され、活用方法次第で企業の生産性は飛躍的に上昇するだろう。これからの時代、5Gが産業分野でどのように活用されていくのか楽しみだ。

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