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4/14(火)ニュース 八村塁xダルビッシュ有がライブ配信する時代に。5G+UGC配信権を確立せよ

この記事の注目点はココ!

・ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ(UGC)の登場が、巨額の収益を生み出すオリンピックのTV放送のようなスポーツ放映権にダメージを及ぼす可能性は高い
・4マスを含めたメディアの存在意義が、再び問われる時代が迫っている

かつて日本のスポーツ界において「ドル箱」と呼ばれたプロ野球・巨人戦の放映権は、2000年以降のインターネット時代到来とともに雲散した。

それと同様な流れが、「5G元年」とされる2020年に生まれている。YouTubeやTikTokなどに代表されるユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ(UGC)の登場が、巨額の収益を生み出すオリンピックのTV放送のようなスポーツ放映権にダメージを及ぼす可能性は高い。

スポーツ放映権の「ダム崩壊」は、スポーツの権利元、放送局そしてそれを取り持つ広告代理店にとって大きな痛手となりえる。もし崩壊すれば、世界的なスポーツ・ビジネスモデルの根幹が揺らぎかねない。

ダム崩壊を回避する策はあるのだろうか。もちろん…と言ってはなんだが、対応策はいくつかある。

ビジネス・ソリューションとして「UGC配信権」を提案

まず、そのひとつが「5G配信権の確立」だ。

いや、正しくは「5G+UGC配信権」とすべきか。ここでは以降「UGC配信権」と略記する。

通信会社のソリューション上に、スポーツ・ビジネスをどう構築するべきか思案し始めた3年前から、私は当時の電通スポーツ局放送映像事業部の一部のメンバーに提言していた。

まだ単純な着想に過ぎないが、まずはテレビ局にセールスしている「放映権」とは別にUGCによる権利を定め、「UGC配信権」として新たな権利料を確立すべきだろう。

これまで通り「放映権」セールスを行い、それとは別にUGCによる動画制作を「UGC配信権」として切り出し、YouTubeなどSNS各社に売りに出す。もしYouTubeが購入した場合、UGCはYouTubeのみに露出し、他のSNSにUGCが掲載された際は、他社に対し著作権侵害勧告するという仕組みだ。

つまりスタジアムで「動画を撮るな」と管理するのではなく、「撮った動画はYouTubeへ」と促進。それ以外の事業者には削除依頼を出す。もちろん、放映権とUGC配信権はセット販売でテレビ局に販売しても悪くない。

5GとUGCの到来により、放映権のダムが崩壊し、ビジネスモデルが根幹から揺らぐのであるなら、それに先んじて権利を切り出す必要がある。たとえ放映権料が目減りしたとしても新たにUGC配信権をセールスすることで、権利元への補填が可能となるだろう。

UGC配信権にまつわる2つの策

MLB放映をヒントにした「UGC配信権」のビジネスモデル

実はこのモデルには前例がある。15年前、私はMLB(大リーグ野球)公式サイトを担当していた。MLBは30球団から出資を募り「MLBアドバンスド・メディア(MLB Advanced Media 以下、MLBAM)」社を2000年に創設。MLBがインターネット・プロトコルを介して運用する事業を同社に移管した。テレビ放映権についてはMLB本体が管理し、「インターネット配信権」についてはMLBAMが管理するよう仕分けたのだ。

MLBの放映権を仕入れていた電通は15年前、それまで通りテレビ局向けに放映権を購入。さらにヤフーなどインターネット事業者向けにこの「インターネット配信権」を購入した。権利元のMLBは、インターネット時代到来により目減りする可能性のあった権利料に対し、先手を打ったわけだ。

MLBは現在、このインターネット配信権をアメリカ国内ではMLB.TVとして自社で運用して配信料を稼ぎ、例えば日本のようにDAZNにインターネット放映権として卸すなど、それぞれ収益を上げている。MLBAMは2016年には6億2000万ドルの売上を計上し、2014年には米『Forbes』誌から「もっとも巨大なメディア企業」と表現された。

5G到来とともに、これと同様の権利構図を構築すべきだ。UGC配信権を先んじて確立することにより、試合会場の観客は気兼ねなく撮影して配信することができるし、また会場外では視聴者がカジュアルにスポーツ動画を楽しむことができる。新しい視聴方法が生み出される時代になる。

もうひとつの策は、既存メディアがUGC配信権を取り込む積極促進案だ。

権利元からメディア自体が放映権を仕入れる際、UGC配信権も同時に購入し、UGCをメディアの正規コンテンツとして活用する。

例えば、試合会場から通常のテレビカメラにより映像を制作するとしよう。そこに同じ会場で録画されたUGCをスイッチングなどで取り込めば、多アングルのテレビ放送を提供することができる。UGCのうちテレビで使用しない動画は、テレビ局の公式プラットフォームなどに開放するのだ。

テレビ放送とは別に、公式YouTubeチャンネルなどの別のプラットフォームで広告収入を得るか、それともサブスク・モデルで購入を促すか……いくつかのビジネスモデルが構築できるだろう。シナリオ次第ではUGCを用いた「360度映像」などの仕入れも可能になる。

メディアが放映権と配信権を支払う代わりに、テレビ映像とUGCの双方をオンエアし、収入増を図る方策だ。

プロ野球×地方局の新たな中継方法

四国アイランド・リーグの新たな取り組み

こちらも実はプロ野球と地方局が新しい取り組みを始めている。

プロ野球と言ってもセ・パ12球団ではない、四国アイランド・リーグだ。小さなリーグゆえ12球団ほど潤沢な予算はない。それでも「地元のチームを応援したい」「試合を見たい」というファンは、野球どころの四国では東京で想像するよりはるかに多い。

そこで、やはり限られた予算で苦心している地方局は、試合中継のうちバッテリー間の映像だけをテレビカメラで撮影。ネット裏、一塁側、三塁側からは観客を含めたスマホのカメラで撮影し、スマホ映像で中継を補完、多アングルをスイッチングすることで、バラエティ溢れる映像を制作し、試合中継を行った。予算に苦慮する地方局だからこそ、あえて挑戦できたソリューションだ。
このソリューションは、大規模スポーツ・イベントでも有益だろう。
既存の放映権を死守すれば、時代に遅れる

ここでインターネットの黎明期を振り返ってみよう。
旧メディア、つまり新聞、テレビ、雑誌、ラジオの広告を販売することでビジネスモデルを構築してきた広告代理店は、インターネット到来時、これを旧メディアの敵とみなし、各種の権利を譲渡しないよう抗って来た。特に大手広告代理店は旧メディアの既得権を死守すべく、デジタル・メディアを排除しようとさえしていた。

例えば、電通は新聞やテレビではその広告を寡占するほどの影響力を誇ってきたが、長らくデジタル・メディアを排除する方向性を捨てることができず、デジタル・メディア広告領域で出遅れた大きな要因のひとつとなった。サイバーエージェントやオプトなどの台頭を招き、デジタル領域での影響力を盤石にすることができなかった。

これと同様、広告代理店が既存の放映権を死守すべく、UGC配信権を締め出しに動くようでは、時代の隆盛にまたも遅れを取る要因となるだろう。率先しUGC配信権の確立に乗り出し、新しいデジタル・ビジネスを創造できるのか、代理店経営陣の審美眼が試される。

インスタライブにアスリートが登場。普段の姿を覗く

八村×ダルビッシュに見る「インスタライブ」の可能性

素人がアプリを駆使し、気の利いたUGCを作成する……そんな時代は瞬く間に通り過ぎ、現在のYouTuberたちを眺めても明らかなように、プロカメラマン顔負けのUGCが続々とリリースされている。

先日インスタグラム上で、ダルビッシュ有が八村塁を誘って行われた「インスタライブ」は、UGCの可能性を感じさせる好例だ。

まず、そのライブ配信は2人がインスタにアクセスするトラブルから始まる。八村が画面上で待っているのだが、ダルビッシュがなかなかアクセスできない。視聴者がこのトラブルを心配し、その声が、続々とタイムラインにテキストでアップされる。ハラハラした臨場感もたまらない。

ダルビッシュがアクセスすると、画面にはぼさぼさの髪型で会話をかわす2人の姿が。普段メディアで取り上げられる姿とは異なる「アスリートの素顔」がライブで披露されるのだ。

こうしてアスリートの日常を視聴できるコンテンツがストリーミングできてしまう時代だ。特に現在、新型コロナウイルスの影響で外出もままならず、時間を持て余したアスリートたちが、積極的に自ら発信を試みるケースが増えていると、元プロテニス選手からも知らされた。

ダルビッシュと八村のLIVEオンエアは1時間弱だったろうか。最後はダルビッシュが「オレ、そろそろ子供の面倒をみないといけないから、じゃあ」とオンエアは終了。アスリートたちのプライベートが覗ける、こんな面白い「番組」をテレビが作り出すことは可能だろうか。

旧メディアは、素人が映像を配信する際、映像のクオリティを保つための「編集力」が争点となると想定していた。しかし、ダルビッシュと八村のように、ストリーミングとしてオンエアし続けるだけでも、非常に興味深いコンテンツ提供が可能という好例だ。

スマホを始めとする5G端末とインスタのようなアプリの進化により、4マスを含めたメディアの存在意義が、再び問われる時代が迫っている。5G時代の到来により、UGCはさらなるメディアの変革を促す。

既存メディアが、UGCの取り込みに失敗すると、その地位をも脅かされかねない。そんな近未来図を次回は想像してみたい。

引用:八村塁xダルビッシュ有がライブ配信する時代に。5G+UGC配信権を確立せよ
スポーツ業界における放映権ビジネスも5Gの到来に伴って変化していくのかもしれない。

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