この記事の注目点はココ!
・ドローンでありながらAIのビデオカメラがリリースされた
・AIによる被写体自動追尾が優秀なため、カメラを固定していても動いた映像を撮ることができる
●ユニークな卵形ボディのドローン兼ビデオカメラ
ドローンでありながらビデオカメラ――そんなユニーク製品「PowerEgg X」をPowerVisionが発売しています。ジャンルとしては「自律式パーソナルAIカメラ」として位置づけられており、独特の製品となっています。今回、ドローンとしてではなく、AIカメラとしての性能をチェックしました。ドローンとしての機能も十分ですが、それに加えて手持ちで使えるというのがPowerEgg Xのメリット。ドローンの機能を生かしたビデオカメラとして、想像よりも利便性の高い製品となっていました。
PowerEgg Xは、その名の通り独特な卵形のボディを採用したドローンです。卵よりも少し細長いですが、フラットでつるつるのボディはとてもカメラには見えません。下半分のカバーを取り外すとカメラとボディ底面が現れます。ボディ底面にはセンサー類が配備されており、ドローンモードで使用されます。
カメラにもレンズ固定用のカバーがあって、これを取り外すことでカメラの動きがフリーになります。ドローンモード、AIカメラモードのいずれでも取り外して使用します。
上側のカバーは3分の2ほどの位置から取り外せます。半分以上をバッテリーが占めており、取り外すとmicroSDカードスロットが現れます。バッテリー上のボタンを押すとバッテリー残量が表示され、すぐにもう一度長押しすると電源がオンになります。バッテリー残量確認や電源オンは、上カバーを装着した状態でも利用可能です。
PowerEgg Xは卵形のボディですが、AIカメラやドローンとして利用するためには「合体」をしなければなりません。AIカメラモードでは、付属の「クリップベルト」を装着することでハンディカメラとして機能します。ドローンモードでは、同じく付属のプロペラアームを装着します。この付け替えをすることで、卵形のシンプルなボディがビデオカメラやドローンに変身するわけです。
一手間増えるのは確かですが、もともとドローンはプロペラを開くなど多少の準備が必要ですし、普段はAIカメラとして使い、必要に応じてドローンとして使うことが可能というのが特徴的です。ドローンは、飛行可能エリアが限られているなど、常に撮影には使えません。逆に、飛行させないと普段の撮影には使いづらく、AIカメラとして普段使いができるというのはいい工夫です。
以前は、GoProがカメラ部分を取り外してGoProのアクションカメラとしても使えるドローン「KARMA」を販売していました。それに比べると、PowerEgg Xのカメラ部は大型化していますが、普段使いのカメラとして使えるという点がメリットです。
難点は、単独では使いづらい点です。モニターを搭載しないため、撮影にはスマートフォンがどうしても必要となるからです。本体の電源をオンにするとカメラが駆動し、無線機能がオンになります。そこでスマートフォンと無線LANを接続すると、モニターによる撮影や操作が可能になります。
スマートフォンアプリの「Vision+ 2」アプリは、PowerEgg Xのコントロールを行うアプリです。インストールして起動し、Power Egg Xと無線LANで接続することで、カメラの映像を表示してコントロールできるようになります。
ドローンを通常のカメラとして使うメリットは、強力な手ブレ補正を搭載する点。多くのドローンは、上位機種を中心に強力なジンバルを搭載しており、3軸以上の手ブレ補正が可能な製品が多くなっています。PowerEgg Xも3軸対応の手ブレ補正をサポートしており、安定した動画撮影が可能です。スマートフォンやアクションカメラなどの電子式手ブレ補正とは異なり、ジンバルによる物理的な補正なので、画角が狭くなるといったことがないのがメリットです。
○ビデオカメラ的なベルトや三脚アダプターも付属
AIカメラモードは、アプリでAIカメラモードにすることで動作します。クリップベルトを装着すれば安定して構えることができるようになりますが、装着自体は必須ではありません。クリップベルトの逆側に三脚用アダプターを装着することで、三脚を利用することも可能で、よく考えられています。
カメラを起動すると、画面上のUIはドローンのUIによく似ています。カメラのライブビューにシャッターボタンが配置されているのは当然ですが、カメラのジンバルを操作するジンバルコントローラーが表示されているのが大きな特徴です。さらにジンバルモードの設定ボタンもあり、遠隔からカメラのパンやチルトが操作できる点が特徴です。
撮影の際は、ジンバルモードを設定することがポイント。追尾、ロック、FPVの3モードがあり、タッチするごとに切り替わります。通常のカメラと同様に動作するのがFPVモードです。本体の動きに合わせてカメラの向きに合わせて撮影ができます。通常のカメラと同じ動きになると考えれば間違いありません。
追尾モードでは、カメラを回転させる方向(ロール)に傾けても水平をキープしようとします。傾きを問わずに水平をキープできるので、普通の撮影では一番使い勝手がいいでしょう。ジンバルの可動範囲を超えると補正はできませんが、撮影時の安定感は高いモードです。
3つ目のロックモードは、ピッチと軸の2種類のロック方式があります。ピッチロックは本体の後部を中心に、カメラ部が上下方向に動いても回転してもカメラ位置をキープする方式です。横にパンするときに、カメラが多少上下にぶれても傾いてもそれを補正して水平パンが可能になります。上下を撮影しようとしてカメラを上に向けても希望の方向を撮影できないので、普段の使い方ではなく、水平パンをしたいときに利用するといいでしょう。
もう一つの3軸ロックは、本体後部を中心にカメラの向きを上下左右に振っても、回転させてもカメラが一方向を向くようにしたものです。個人的にはあまり用途は想像できませんでしたが、カメラを動かしても一定方向を向いてくれるのは面白い効果です。
ジンバルの可動範囲はピッチが-90度~+20度、水平が-55度~+55度となっており、可動範囲を超えての補正はできませんが、通常の撮影であればシーンや撮影意図に応じて切り替えて便利に使えそうです。
ジンバルコントローラーも重要なポイントです。三脚に設置した状態でも、コントローラーによって上下左右方向にカメラを動かすことができるのです。これは普通のカメラにはない機能で、監視カメラのようなイメージだと考えれば分かりやすいでしょう。
撮影モードは、写真、ビデオ、スローモーション、低速度撮影の4種類。ビデオは最大4K60fpsでの撮影が可能。ISO感度、シャッター速度、露出、測光モードを手動で設定するマニュアルモードも搭載します。
写真は、通常撮影に加えてHDR、連写、AEB連写(露出ブラケット)、タイマーのモードがあり、4:3で4,000×3,000ドット(1,200万画素)の撮影が可能。同じくISO感度などの手動設定もできます。
スローモーションはフルHDで120fps、HDで120fpsの2つのモードで撮影が可能。低速度撮影はいわゆるタイムラプス動画で、一定間隔で撮影した写真を合成して動画にするものです。1秒から60秒までの間隔を選び、30秒から1時間までの撮影時間を選択できます。生成される動画は15秒までですが、間隔または撮影時間を選ぶと、撮影できる秒数は自動的に選択されるので、あまり悩まずに撮影できます。
もう一つの特徴は録音機能です。一般的にドローンにはマイクを内蔵せず、音声を録音できません。これに対して、PowerEgg Xは音声の録音機能を搭載しました。本体に録音機能を装備するのではなく、撮影時に使用するスマートフォンのマイクを利用して録音し、それをあとで合成する、という仕組みです。
最近のスマートフォンのマイクは優秀であることに加え、ワイヤレスマイクのように手元にあるスマートフォンに録音できるため、離れた場所からでもキレイな音で録音できるというのが強みです。撮影ボタンに合わせて音声の録音も開始するため、特に音ズレもせずに同期されます。録音は、ビデオモード時に画面上にあるマイクボタンを押すことで動作します。
もともとスマートフォンを使わないと撮影できない仕組みのため、手元のスマートフォンをそのままマイクに使えるというのは面白い工夫です。本来は記録できないドローン撮影中の音声を録音できる点もメリットです。ただし、あくまで手元のスマートフォンなので、上空や離れた場所の音を録音できるわけではありません。ドローンは羽音がうるさいのでマイクは向いていませんが、PowerEgg XはAIカメラモードでもそれなりの動作音がするため、スマートフォンでマイクを離して録音できるのは便利です。
●AIによる被写体自動追尾が優秀
PowerEgg Xは「AIカメラ」と称していますが、それはカメラが被写体を検出して自動追尾する機能があるからです。基本的には人物を検出して追尾するだけですが、ジンバルによってカメラが動くため、カメラを固定していても動きのある映像が撮影できます。搭載されているのは「AI自動トラッキング機能」で、人物や車などの対応する被写体をモニター内に写して画面を長押しして被写体を囲むか、被写体をダブルタッチすると、被写体が緑色の枠で囲まれます。その後は、カメラが自動で追尾してくれます。ジンバル範囲外にでなければ、ジンバルが自動的に被写体を追尾します。
いったん、被写体がジンバルエリアから抜けても、すぐに戻ってくればまた追尾が復活します。少なくとも人物の追尾はかなり良好で、動き回っても比較的正確に追尾してくれます。
離れて撮影するときに便利なのがジェスチャー機能です。手のひらをカメラに向けると、AI自動トラッキング機能が動作し、手のひらを示した人が対象となります。2本指を立てるピースサインだと写真の撮影、円を作るOKマークだと多人数撮影、親指を立てるサムズアップだと録画の開始・終了となります。
遠隔操作はスマートフォンでもできますが、ジェスチャーを使えば簡単に素早く操作ができる点がメリットです。
○画質は上々、バッテリー駆動時間も長め実際に撮影してみると、丸みを帯びたボディは持ちやすく、重さはそれなりですが、522gという重量は4Kビデオカメラとしては重い方ではありません。とはいえ、大きさや重さの割にズームがない点はビデオカメラと比較するとデメリットといえます。35mm判換算27mmという焦点距離は、スマートフォンカメラに比べると狭いのですが、ビデオカメラとしては一般的。ドローンとしてはやや狭いといったところでしょうか。
ズームがないので、どんなシーンにも適しているわけではありませんが、手持ちで歩きながらの撮影でブレが少ない撮影ができます。三脚に設置したPowerEgg Xでも、被写体を追尾したり自分でパンをしたりして撮影できるという点は面白いところです。また、バッテリーが大型のため、AIカメラモードだとバッテリー駆動時間が4時間と長いのもよい点です。
カメラを固定して1人で動画を撮影するような場合、動き回っても追跡してくれるのが嬉しいところ。ジンバルの可動範囲のみですが、「部屋の中を左右に歩き回る」ぐらいはカバーしてくれます。YouTubeで動画を配信するようなシーンにも役立ちそうです。
スマートフォンがマイクになるのも見逃せません。カメラを少し離れて設置しても、手元のスマートフォンがマイクになるため、音声を別撮りする必要もなく、外部マイクも不要です。一般的なYouTubeなどのライブストリーミングができないのは残念なところです。
以上のことから、自宅などで個人で録画をしたい場合に向いたカメラだと感じました。特に、ある程度動きのある動画を撮影する場合、カメラを固定していると画角から外れてしまう失敗を犯しがちですが、このカメラであれば自分を常に追尾してくれるので、画角が外れることなくきちんと撮影してくれます。音声も手元のスマートフォンで録音できるため、安定して音声を記録できます。屋外でも音が小さくなることもないので便利です。
手持ちで気軽に自分撮りをするにはちょっと難しいですが、優秀な手ブレ補正と追尾機能は、今までとは異なる撮影の仕方を実現してくれるカメラです。
○ドローンとしての機能は標準的短時間の試用でしたが、ドローンについても紹介しておきます。クリップベルトや三脚アダプターを装着する部分にプロペラを装着することでドローンとして利用できます。というより、本来はこちらがメインの機能なのですが、ドローンは一般ユーザーだと使えるシーンが限れているため、よほどの人でないと普段使いはできません。
PowerEgg Xは飛行時の重量が862gとなるため、航空法の無人航空機という位置づけになり、専用の飛行エリア以外はおおむね申請が必要です。とはいえ、このクラスを購入する人であれば、こうした点はある程度の把握はしているでしょう。
前方と下方にビジョンシステムと超音波センサーの2種類のセンサーを装備し、屋内外で安定した飛行が可能だとしています。自動復帰や障害物認識機能なども搭載しています。
操縦は、付属のリモートコントローラーにスマートフォンを接続して行います。スマートフォンとの接続ケーブルは、Lightning、USB Type-C、microUSBの3種類が付属。コントローラーではジョイスティックによるドローンの操作に加え、上部にある撮影ボタン短押しで写真撮影、録画ボタンの短押しで動画撮影・停止、ジンバル制御ダイヤルを回すことでジンバルのピッチ角度変更が可能です。モード1とモード2の切り替えが可能で、コントローラーの操作は奇をてらわないものです。
フライトモード切り替えスイッチがあり、高速飛行のP(Professional)モード、安定飛行するN(Normal)モード、ゆっくり飛ぶE(Easy)モードという3種類から選択できます。
ほかには、2秒間長押しするとリターンポイントに自動帰還する「スマートリターン」ボタン、任意の機能を割り当てられるカスタムボタンも配置されています。
カメラのスペックは、当然のようにAIカメラモードと変わりません。ドローンだけのスマート機能では「スマートフォロミー」、サークル旋回、ショートビデオの各機能を搭載します。
スマートフォロミーは、スマートフォンアプリで「AI」アイコンをタッチしてフォロミーを選び、ノーマル/パラレル/スポットライトの3種類から方式を選べます。ノーマルは目標を追従し、パラレルは並行し、スポットライトはカメラを被写体に向けるだけ、というモードです。
ショートビデオは、ドローンが指定の動きをしながら自動撮影するモードで、後方・上空に離れていくドロニー、垂直に上昇するロケット、周辺を回るサークルなどの動作が可能です。
今回は試せていませんが、専用の防水アクセサリーも用意されています。防水保護ケースを装着しての防水モードでは、スマートフライト機能やビジョンシステムが使えなくなり、飛行速度も制限されますが、雨の中での飛行が可能。これにさらにフロートを取り付ければ、水上への離着陸が可能になり、新たな撮影が可能になります。
○自撮りが便利でVlogなど普段使いに向くPowerEgg Xは、普段使いもできるドローンとして、新しい世界観のある製品です。ドローンとして飛ばさないときも、ビデオカメラとして撮影できる点は面白く、ジンバルの性能も高いため、手持ちでもブレのない安定した撮影ができます。
「AIカメラ」としての機能はそう多くはありませんが、人物の追跡が可能なので、固定しても動く被写体を抑えられますし、手持ちでも動き回る子どもを追いかける、といったシーンでも、カメラが自動追尾してくれるのでフレームアウトせずに追うこともできそうです。もちろん、あまりに動きが速すぎたり不規則すぎたりすると難しいものですが、撮影の補助としては便利に使えそうです。
個人的には、ドローンは普段から手軽に使えるカメラではないため、こうしたビデオカメラとしても使える仕組みは便利だと感じました。とはいえ、常にスマートフォンとの接続が必要である点や、ズームがない点は物足りないのも確かです。
メインカメラとしては力不足ですが、固定して動き回るようなシーンでも広い視野で追尾してくれる点は強力です。「自撮りでドローン」という使い方はよく見られますが、実際のところはかなり難しいので、それなら「自撮りにビデオカメラ」という使い方の方が扱いやすく便利です。上空から接近した映像に、固定または手持ちで撮影した映像を加える、そうした、どちらの使い方もできる点が魅力です。Vlog用としても向く製品といえるでしょう。
(小山安博)
引用:Vlog用カメラとしても魅力的なドローン「PowerEgg X」レビュー
カメラ付きのドローンはこれまで販売されていたが、新しくAIの機能を搭載したドローンが販売された。動いている人物をAIが自動が捉えていく機能は、スポーツの撮影にも大きく役にたつに違いない。
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